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| 「首尾は上々ですぜ、旦那。今度は十分すぎるって程、元気でさあ。捕えるのに、ずいぶんと骨が折れやした」 「当然だ。それだけの金を払っているのだからな。市長不在の今が好機なのだ。二度の失敗は許さん」 「なるべく人の多い場所に放ちやす。さぞ見ものでしょうぜ」 「混乱は大きければ大きいほどよい。その方が市民も軍の創設を強く望むだろうからな」 「その時ゃ、俺たちのことも頼みますぜ」 密談は突然の騒音によって打ち切られた。一同の視線が集まった先で、壺が割れていた。その向こうに小さな人影。気まずそうに縮こまっている。 「こりゃあ驚いた。市長の娘御がこんなあばら家においでたあ。いつも連れてる腰巾着はどうした?」 「……あいつは今日はいないわ。それよりあんたたち家宅不法侵入よ! 入市許可だって取ってるの!?」 いつもの剣幕もごろつきの集団相手では効き目がない。 「聞いたか、ひとりで来たとよ。見上げたもんだ。……市長がおめえのために、一体いくら支払う気になるか、ひとつ試してみるのもいいな」 「近寄らないで!」 伸ばされかけた太腕を剣の輝きが制した。 どうにか間に合ったらしい。 「下がれ、狼藉者! アルヴィ殿、ご無事か?」 「スルギ!?」 ごろつきどもが一斉に剣を抜く。 「なんのつもりだ小僧、ぶっ殺されてえのか?」 「拙者はフェルミナ市長息女アルヴィ殿の警護役スルギ。武器を捨てよ、さもなくば……斬る!」 「ふざけやがって、寸刻みにしてやる!!」 銀光が閃いた。 |
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| 大人といえど、しょせんはごろつき。鍛錬を積んだサムライの敵ではない。たちまちひとりを残して倒れ伏す。暗がりにいたはずの親玉はいつの間にか姿を消していた。 だが最後に残ったひとりは布で覆われた部屋の一角に飛びのいた。一気に引き降ろされた布の向こうは鉄格子。そしてその奥の闇に獰猛な気配。 「街に放つつもりだったが、しかたねえ。最初の餌食になりやがれ!」 |
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| そう言ってごろつきが格子を開くや、中から凶暴な影が飛び出し……言った当人に襲い掛かった。悲鳴が上がる。 無残な肉体を踏みしだき、貪っているのは、未だかつて見たことのない、恐るべき魔獣だった。しなやかで残忍。殺すために殺す。死そのもの。 本能で敵わないと悟る。培われた感覚が恨めしい。彼女もそれが分かったらしい。背後から袖を掴む感触。 「アルヴィ殿、逃げられよ。ここは拙者が」 「……勝てるの?」 「……」 「……あんた、あたしが嫌いだったんでしょう? なんで来たのよ?」 「拙者はサムライ、務めを果すまで」 「それだけ? それだけのために命をかけるの?」 「……」 「スルギ!」 「……どうしても分からないことが。その答えを……」 魔物が吼えた。新たな獲物に取り掛かるつもりらしい。ゆっくりとこちらに進み出る。構えた剣の先が震えた。 「アルヴィ殿!!」 「市長の娘は、誰かを見捨てたりしちゃいけないの!」 魔獣が腰を落とすや、一気に跳躍した。いつしか互いに掴んだ手に力がこもる。 真っ赤に輝く瞳が目の前に迫って…… |