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「四個!」「十匹!」「百羽!」
 けらけらと笑い声が谷間の木々にこだましました。森のいたずら三人組、ブーブとポロとカプーです。
 三人は、口さえ開けばこんな調子。今日も、近くの村になぞなぞ合戦をしに遊びに行くところでした。
 森を抜けて、丘を下ると、村まではもうすぐです。
 ところが、せっかく来たのに、村人たちの様子がいつもと違います。一体どうしたというのでしょう?
「キロンじいさん、遊んでやるぞっ!」
「ああ、お前さんたちか。悪いが今日は遊んでやれんのだ。すまんの」
 そう言うとキロンじいさんはバタンと扉を閉めて、引っ込んでしまいました。しょうがないので次の家に向かいましょう。
 ところが返ってきた返事はみんな同じでした。
 水車小屋のクリンも、村長の孫のテダも、鍛冶屋の娘のジャラも、みんなみんな相手をしてくれません。
「つまらないヤツ!」「ナイヤツ!」「ツッ!」
 それでもあきらめず、村中の人々を訪ねてまわるブーブたち。とうとう見かねた村長さんが訳を教えてくれました。

 一週間ほど前のことでした。どこからともなく現れたひとりの巨人が河の上流に居座ってしまい、流れをせき止めてしまったというのです。おかげで河はすっかり涸れてしまい、村では畑はおろか飲み水にまで事欠く有様でした。
「わしらにゃとても退治できんし、王様にお願いしに行こうにも、その間に畑は駄目になってしまう。まったく、どうしたものやら……」
 村長さんは頭を抱えてしまいましたが、三人はそんなことより、なぞなぞの相手がいないことの方が不満です。どこかにいい相手はいないものでしょうか?
「お前たちも危ないからな、絶対、山には近づくんじゃないぞ!」
 ……いました。三人はにんまり顔を見合わせると、くるりと回って歩き出しました。
 もちろん、どこに向かったのかは、言うまでもありません。

 三人は涸れた河をたどって山に入っていきました。すっかり水が退いてしまった河は、見る影もありません。そこかしこに大きな水たまりが残っていて、魚たちがちぢこまって身をひそめていました。
 山歩きは慣れっこのブーブたちでも、ぬかるんだ道行きはなかなか大変です。それでも陽気に歌を歌いながら進みます。
「♪ホーホー・ヒー! ヒーホー・ヒー!
河をちょきちょき、はさみで切れば
あっという間に水たまり。魚もカニも大弱り……」


 いつの間にか陽が沈み、夜が訪れていました。河の跡も細くなり、振り返っても、もう村の明かりも見えません。ずいぶん山奥まで来たようでした。
 やがて月が峰の向こうに顔を見せました。まあるい銀色、満月でした。そこからうんと離れた、寂しい空の一角には蒼い星がひとつ、ひっそり静かに輝いています。
「♪青星やい、ひとりでそんな寂しくないか、
赤星どこだ、黄星はどこだ、ヒー・ホー・ヒー……」
 どしん。
 歌声に応えるように、音がしました。
 どしん、どしん。暗い林の向こう、なにか大きくて重たいものが落ちたかのような音です。
 ブーブたちも歌うのを止めて、耳を澄ませました。すると、どしんどしん、という音に混じって、もうひとつ別の音が聞こえてきました。
 低く、うなるような響きではありましたが、それは涙声でした。
「大きくなれよう。教えてくれよう、月よう、月よう、月よやあい!」
 なんともおかしな言葉じゃありませんか! 三人はすっかり興味津々、用心もそこそこに、小走りで声のした方へと向かいます。
 すると不意に目の前に、もうひとつ月が現れました。それは水面に映った像でした。こんなところに池があったのです。
 そして満月を映した大きな池のほとり、木々が立ち並ぶその岸に大きな人影が立っていました。
 真っ赤なもじゃもじゃ髪をてっぺんに乗せた、小山のように大きな背中。うわさの巨人に間違いありません。岸に生える大木をつかんでは、根こそぎ引っこ抜いて、放り投げています。その度に大きな地響きが上がりました。
 ブーブたちはにんまりとしました。なんて面白そうなやつだろう!
 三人は進み出ると、大声で言いました。
「大きいやつ、大きいやつ、遊んでやるぞ! なぞなぞやるぞっ!」